今日から新年度ということで、気合いを入れてシリーズものを。
EMVA1288は、撮像素子やカメラの性能を評価するための規格です、
European Machine Vision Associationにて制定されたもので、下記が公式サイト。
http://www.emva.org/standards-technology/emva-1288/
これに従って測定/計算した結果を”EMVA1288データ”として、
Webサイトに載せているカメラメーカーが増えています。
数年前、ひと通り仕様書を調べたことが有ったのですが、
未だに難解で判らない箇所も多く、国内での知名度も未知数 ?
ヨーロッパの規格なので、海外メーカーが中心なのかも。
ということで、当時自分なりに理解した範囲で書いていきます。
あくまで『自分なり』なので、多少の不備は御勘弁下さい、
これから規格を勉強される方の取っ掛かりになれば幸いです。
色々なデータが有りますが、まずは簡単な量子効率から。
量子効率とは?
撮像素子(CCDやCMOS)は、光子(photon)を電子(electron)に変換します、
光子からどれくらいの電子に変換されるかが、量子効率(単位:パーセント)
例えば光子10,000個から電子5,000個なら → 量子効率:50%
ハイ!簡単ですね、当然大きい方が効率の良い撮像素子です、
ほぼセンサーの性能次第で決まる数値と言えます。
EMVA1288の規格書では、下記の計算式(1)になります。
(引用元:EMVA Standard 1288 Release3.0 以下同様です)
名称 | 説明 | 単位 |
---|---|---|
η(λ) | 量子効率 | % |
λ | 光の波長 | nm |
μe | 電子数 | 個 |
μp | 光子数 | 個 |
同じ撮像素子でも、波長によって量子効率は変わるため、
どの波長で測定したかも明記する必要が有ります。
英語でQuantum Efficiency、略してQEとも良く言われます。
光子数(photon) μpの計算
規格書に下記の計算式(2)が有ります。
cは光速度(299792458 [m/s])、hはプランク定数(6.626×10-34 [J・s])
これらを代入し、計算しやすい桁に合わせたものが下記の(4)式
名称 | 説明 | 単位 |
---|---|---|
A | 撮像素子の画素サイズ | μm2 |
texp | 露光時間 | mS |
λ | 光の波長 | um |
E | 撮像素子に入る光の強さ | μW/cm2 |
本式では、波長の単位はumなので注意して下さい! (よく間違えます)
ここで初めて画素サイズ(A)が出てきました、同じ光の強さ(E)でも
当然、画素が大きいセンサーの方が μpは大きくなります。
露光時間(texp)も同じく、長くなるほどμpは大きくなります。
電子数(electron) μeの計算??
あとは電子数(μe)さえ判れば、量子効率は計算出来るじゃん、
と思うでしょう?、残念ながら直接μeを計算出来る式は有りません。
じゃあどうやって??
一言で言えば、カメラのデジタル出力から逆算します。
※自分なりに、こういう結論になりましたが、
もっと別の方法が有るのかもしれません。
(各メーカーさん、どうやって計算してるのか知りたいなあ)
その変換係数を、EMVA1288では”システムゲイン”と言います、
次回はシステムゲインについて書きたいと思います。
最後に量子効率データのサンプルを。
PointGreyはEMVA1288データを積極的に開示しています、
下記pdfで自社製品40機種ほどのデータを一覧で見られます。
https://www.ptgrey.com/support/downloads/10571
6ページ目のグラフが、量子効率高い順に並んでおり見やすいです、
一番高いのはSONYのIMX249で80%、興味の有る方は見てみて下さい。