mengineer's blog

ニッチなネタばかりですが。

EMVA1288 データを見てみよう!

と思って調べたのですが、現状EMVA1288データを積極的に開示しているのは、 BaslerPointGreyの二社だけのようです。 (もし他にも有れば情報下さい!)

Basler

サポート→ダウンロード→文書のダウンロードのページから、
機種毎のEMVA1288データが参照出来ます、リンク先はこちら

ここのデータにはEMVA1288の大半の項目が網羅されており、かなり本格的です。
また製品仕様に抜粋データが記載されている場合も有ります、こことか

PointGrey

機種毎のページでDocumentsのTABからダウンロード出来ます、例えばここ
その機種を含んだシリーズ全体のEMVA1288データがまとめられています。

またhttps://www.ptgrey.com/camera-sensor-reviewのページでは、
自社で採用しているセンサーを一覧で比較出来る資料が載っています。
(以前、EMVA1288の世界その1でも引用したものですね)

ということで、この二社で主な製品のデータを見てみましょう。

IMX174 USB3カメラで比較

最近はやりのIMX174を使ったUSB3.0カメラのデータです、
元データは、前出のリンク先参照。

Basler acA1920-155um

残念ながら、ダウンロードページに、この機種のデータが無かったので、
下記では製品仕様のページに記載されたパラメータのみを引用しています。

PointGrey GS3-U3-23S6M-C

通常モード(Video mode 0)とノイズ低減モード(Video mode 7)が有ったので、
両方のデータを載せています。

f:id:mengineer:20160419134141p:plain

No4 量子効率

差が有りますが、この件は後述。

No5 Saturation CapacityとNo6 SNR

どれも近い数字ですが、以前の説明で{SNR = \sqrt{\mu_{e.sat}}}でしたので、
No5のSaturation Capacityが近ければ、当然No6のSNRも似たような値になります。

この式をBaslerのデータで検算すると {20\log\sqrt{31700} = 20 \times 2.25 \fallingdotseq 45.01}
合ってそうですね、ひと安心!

No7 Absolute Sensitivity Threshold

Baslerのは公開されていませんが、他のパラメータから計算してみましょう。

飽和時の光子数{\mu_{p}}は、No5をNo4で割れば良いので {\mu_{p} = \frac{31700}{0.656} \fallingdotseq 48320} 程度。

これとNo7の比率がNo8のDynamic Rangeなので {20\log\frac{48320}{No7} = 73.7}より、 {\log\frac{48320}{No7} = \frac{73.7}{20} = 3.685}、よって{\frac{48320}{10^{3.685}} \fallingdotseq 9.98} 程度となり、
PointGrey mode7の 9.77 と近い値だと推測されます。

No8 Dynamic Range

PointGreyのmode0がmode7より悪いのは No7の数値が大きいためです。

No5のSaturation Capacityは同じような値なので、No7の数値が大きい分、
暗い方が狭まり、結果としてDynamicRangeも小さくなります。

今度はPointGreyのデータで検算してみましょう、さっきと同じ計算式です。

{20\log\frac{32406 / 0.76}{16.69} \fallingdotseq 20\log\frac{42640}{16.69} \fallingdotseq 68.15} [dB]

むむむ、開示データが66.87なので1.28[dB]ほど良くなってしまいました...。

この辺が謎が残るところですね、計算式(考え方)自体は規格書そのままなので、
合っているはずなのですが、 まだ何か見逃しているのだろうか??

No9 Temporal Dark Noise

PointGreyのmode0が少し悪いですが、mode7とBaslerでは同程度、
mode7はノイズ低減モードらしいので、当たり前ですかね。

No10 System Gain

以前その2で、電子数とデジタル出力の変換比率(単位 [DN / e-])だと
説明しましたが、ここではその逆数として定義されているようです。

PointGreyのカメラで約0.51、飽和時の電子数が約32,000なので、
飽和時のデジタル出力は 32,000 / 0.51 = 63,529

よってカメラ出力16bit設定で測定されたデータだと推測出来ます。

最後に量子効率の件、測定波長がBasler:545nm、PointGrey:525nmと異なるので
それに依るものと思われます、下記グラフはPointGreyのデータシートより。

f:id:mengineer:20160419220120p:plain

横軸が光の波長、縦軸が量子効率です、525nmあたりが一番大きくて、
右に行くに連れて下がっていますね、545nmあたりでは70%を下回ります。
(センサーそのものの特性です)

各メーカーのデータが、どの波長で測定されたものかにも注意して下さい。

まとめ?

各メーカーでデータに違いが有れば、この数値が小さいからこう有利!、みたいな
解析をしたかったのですが、これと言って顕著な差が有りませんでした。
(比較するデータが二社しか無かったのも残念)

今回判ったこと。

・Saturation Capacityが同じなら、SNRもほぼ同じ値になる。
・Saturation Capacityが同じなら、Absolute Sensitivityが小さい方が、
 DynamicRangeも広くなる。(より暗いところまで撮像出来るため)
SNRの計算式は合っていたが、DynamicRangeの計算式は微妙に誤差有り
・量子効率の違いは、測定された波長でも違うので注意

うーん、いまひとつまとまっていませんが、今回はここまで。
もう少し色々なデータ(の見方)を、研究してみます。