前回の続きです。
以下、引用元は全てEMVA Standard 1288 Release3.0から。
システムゲインとは?
量子効率は、センサーが受け取った光子をどれだけ電子に変換するか?
でしたが、システムゲインは、その電子をどれだけデジタル化するか?
規格書では、下記モデルで図示されています。
赤枠(こちらで追加)が、システムゲイン(K)です。
左からセンサーに光が入り、最終的に右端でデジタル出力されます、
光子 → 量子効率(η)→ 電子 → システムゲイン(K)→ デジタル出力
と物理量が変換されて、流れていくイメージですね。
単位は [DN/e-] → デジタル出力を電子数で割ったもの
例 8bit出力のカメラでデジタル出力:200LSB 電子数:5,000個なら
システムゲインKは 200÷5,000 = 0.04となります。
カメラの出力設定(bit幅)でも変わりますので、注意して下さい。
同じ光量(→電子数)なら、システムゲインが大きいカメラの方が
より大きなデジタル出力が得られる=より高感度、なので良さそう?
ですが、その分ノイズ(上図dark noise)も大きくなるため、
一概に”大きい方が良い”とも言い切れないです。
普通にEMVA1288データを見て性能を比較する分には、
ここまでを知って頂くだけで充分かもしれません。
以下、実際の計算方法などの説明ですが、更にディープな世界へ。
システムゲインの計算方法
いきなり結論から書きます、規格書に下記のグラフが出てきますが、
この傾きがシステムゲインになります。(て、ホントいきなりやな)
X軸:カメラのデジタル出力レベル
Y軸:デジタル出力レベルの分散値
X軸が0〜4000なので、これは12bit出力(のカメラ)の取得データだと
推測出来ます。(実際には暗時レベルを引いたりしますが詳細は後述)
Y軸の計算方法も後述しますが大雑把に言うと、カメラの露光時間を
飽和するまで段階的に増やしながら、順次データを取得していきます。
右上がりのグラフが、右端の”saturation”と書かれた箇所で落ちていますが、
ここでカメラが飽和したことを示します、特徴的なかたちですね、
このグラフをEMVA1288データとして開示しているメーカーも有ります。
グラフの傾きなので、システムゲインKは下記の計算式になります。
実際には、グラフのカメラが飽和しない範囲での傾きを近似計算します。
(規格書では、saturationレベルの0~70%部分を使うよう推奨)
名称 | 説明 | 単位 |
---|---|---|
K | システムゲイン | DN/e- |
明時のデジタル出力分散値 | DN2 | |
暗時のデジタル出力分散値 | DN2 | |
明時のデジタル出力値 | DN | |
暗時のデジタル出力値 | DN |
明時:センサー入光状態、 暗時:遮光状態 です。
ここで疑問がひとつ、システムゲインは電子数とデジタル出力の相関だったのに
肝心の電子数ってどこ行ったんだ? と思いませんか?
その答えは、規格書を色々調べて判ったのですが(またまた自分なりに)
結構なボリュームになるため、詳しい説明は割愛します。
ここでは、上式(グラフの傾き)で計算出来ることを覚えておいて下さい!
との計算方法
規格書ではMean gray valueと呼ばれ、下記の計算式で計算します。
同じ露光時間で、2つの画像(と)を取得します、その平均値がです、
も同様で、遮光状態で取得した2つの画像の平均値です。
露光時間(明るさ)を変えながら、順次これらの画像を取得/計算していきます、
規格書では最低でも露光時間を50分割して測定することが 推奨されています。
更に−を計算します。(って、単に引くだけです)
との計算方法
規格書ではTemporal variance of gray valueと呼ばれ、下記の計算式で計算します。
画像は先ほどのとを使用します、画素毎にAとBの差の二乗を求め、
その平均値が、同様に暗時画像で計算したものがになります。
−を求め、先ほどの−と一緒にExcelでグラフ化、
近似直線(線形近似)で傾きを求めます → これがシステムゲイン
注意として、いわゆる黒が潜ったような状態だとが 異常に小さくなり、
変な結果になる場合有り、または遮光状態なので通常ほぼ一定値ですが、
これが露光時間により大きく変動するような場合も同様です。
最初のグラフみたいに、飽和する手前までほぼ直線になるのが正解ですが、
途中で変なうねりなどが出る場合は、カメラの状態も調べてみて下さい。
量子効率再び
最初の話に戻ります、システムゲインKは電子をどれだけデジタル化するか?
なので、電子数とデジタル出力の関係は下式の通り。
は、さっき出てきた暗時デジタル出力です。(入射光によらず一定)
また電子数は、光子数に量子効率を掛けたものなので、
上記の式は
よってが判っていれば、
から量子効率を計算出来ます、前回その1で電子数の計算式は無いので、
デジタル出力から逆算します、と言いましたが、それがこの内容です。
ふう、やっと前回の宿題まで辿り着きましたので、今回はここまで。