mengineer's blog

ニッチなネタばかりですが。

EMVA1288 データを見てみよう! CCD編

またまたEMVA1288ネタ、前回はIMX174というCMOSのデータを見てみました。

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今回はICX625というCCDです、前回同様 BaslerPointGrey二社のカメラで、
データを比較してみましょう、カメラの型番とデータは以下の通り。

メーカー 型番 EMVA1288データ
Basler piA2400-17gm data
PointGrey GS3-PGE-50S5M-C data Page5参照

IMX174では顕著な差が無かったのですが、ICX625ではどうでしょうか?

EMVA1288データ比較 ICX625

下表は両方のデータシートからデータを抜粋したものです。

EMVA1288データ Basler PointGrey
Quantum Efficiency [%] 47 57
Temporal Dark noise [e-] 13 8.28
Saturation Capacity [e-] 7000 5903
Absolute Sensitivity Threshold [p~] 27 15.69
Dynamic Range [bit] 9.1 9.41
Maximum SNR [bit] 6.4 6.26
Maximum SNR [dB] 38.4 37.71

Quantum Efficiencyの違いは、前回同様で波長の違いですね。
(Basler:545nmで測定 PointGrey:525nmで測定)

Saturation CapacityはBaslerの方が約18%ほど大きくなっており、
そのため、Maximum SNRもBaslerの方が良い数値になっています。

Absolute Sensitivity ThresholdはPointGreyの方が小さいので、
Baslerより暗いところまで撮像出来ると言えます。

Dynamic RangeもAbsolute Sensitivity Thresholdが小さい分、
PointGreyの方が良い数値になっていますね。

今回はデータに差が有り、ある程度比較することが出来ました。

DynamicRangeの計算 Baslerの計算式が判明!

今回のBaslerのデータシート25ページ目にDynamic Rangeの計算式が載っていました。

 { \displaystyle
DYN_{out.bit}  = \log_2\frac{\mu_{e.sat}}{\sigma_{d0}}
}

{\mu_{e.sat}}はSaturation Capacity、{\sigma_{d0}}はTemporal Dark noise ですので、
Baslerでは両者(ともに電子数)の比率から計算しているようです。

実際に計算してみると { \log_2\frac{7000}{13} \fallingdotseq 9.07} 、 データシートは9.1なので検証OK!

ちなみに以前のEMVA1288の世界その4では、下記のように光子数の比率でしたが、
量子効率を掛ければ電子数になるので、比率の計算としては同じことです。

 { \displaystyle
DR[bit] =\log_2\frac{\mu_{p.sat}}{\mu_{p.min}}
}

前回の記事ではSaturation Capacity ({\mu_{e.sat}})を量子効率で割って{\mu_{p.sat}}を求め、
それとAbsolute Sensitivity Threshold ({\mu_{p.min}})の比率で計算していましたが、
Baslerの上記計算式のほうがシンプルで判りやすいかもしれません。

DynamicRangeの計算 PointGreyは??

Baslerの計算式にPointGreyのデータを実際に入れて計算してみましょう、
 { \log_2\frac{5903}{8.28} \fallingdotseq 9.48}となり、データシートの9.41より良くなってしまいました。
(前回IMX174の時も、試算結果がデータシートより良くなっていたはず)

ちなみに逆算すると{\sigma_{d0}} が8.68程度なら、Dynamic Range[bit] が9.41になります。

データシートは8.28なので差が0.4ほど、PointGreyでは何らかプラスαした値を、
DynamicRangeの計算式の分母として 使っている可能性が考えられます。
(あくまで推測なので、もし何か情報御存知の方は是非教えて下さい)

ICX625とIMX250のデータ比較

IMX250はSensor size(2/3Inch)、PixelSize(3.45um)、画素数(2448×2048)
全てICX625と同じCMOSセンサーです。(ICX625の置換用のセンサーでしょうね)

この両者でEMVA1288データを比較してみます。(CCDとCMOSでどう違うか)
土俵を完全に同じにするため、両方ともPointGreyのデータから。

EMVA1288データ ICX625 IMX250
カメラ型番 GS3-U3-50S5M-C GS3-U3-51S5M-C
Quantum Efficiency [%] 58 70
Temporal Dark noise [e-] 8.73 5.11
Saturation Capacity [e-] 6168 10208
Absolute Sensitivity Threshold [p~] 16.30 8.00
Dynamic Range [bit] 9.38 10.83
Maximum SNR [bit] 6.30 6.66
Maximum SNR [dB] 37.90 40.09

全ての項目でIMX250の方が良いデータとなりました、量子効率は良い、
ノイズは少ない、Saturation Capacityは大きくてDynamicRangeは広い、
Absolute Sensitivity Thresholdは小さい、SNRも良い。

このデータ上で見る限りは、IMX250を使わない理由は無いです、
それだけ最近のCMOSの性能が上がったということでしょうね。

あとは空間的なノイズで、PRNUやDSNUなどのデータが気になります。

PointGreyのデータは無かったので、BaslerからIMX250のカメラが出て、
詳細なEMVA1288データが発行されるのを待つとしましょう。