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mengineer's blog

ニッチなネタばかりですが。

EMVA1288の世界その2:システムゲイン

EMVA1288

前回の続きです。

mengineer.hatenablog.com

以下、引用元は全てEMVA Standard 1288 Release3.0から。

システムゲインとは?

量子効率は、センサーが受け取った光子をどれだけ電子に変換するか?
でしたが、システムゲインは、その電子をどれだけデジタル化するか?

規格書では、下記モデルで図示されています。

f:id:mengineer:20160404102221p:plain

赤枠(こちらで追加)が、システムゲイン(K)です。

左からセンサーに光が入り、最終的に右端でデジタル出力されます、
光子 → 量子効率(η)→ 電子 → システムゲイン(K)→ デジタル出力
と物理量が変換されて、流れていくイメージですね。

単位は [DN/e-]  → デジタル出力を電子数で割ったもの

例 8bit出力のカメラでデジタル出力:200LSB 電子数:5,000個なら
システムゲインKは 200÷5,000 = 0.04となります。

カメラの出力設定(bit幅)でも変わりますので、注意して下さい。

同じ光量(→電子数)なら、システムゲインが大きいカメラの方が
より大きなデジタル出力が得られる=より高感度、なので良さそう?

ですが、その分ノイズ(上図dark noise)も大きくなるため、
一概に”大きい方が良い”とも言い切れないです。

普通にEMVA1288データを見て性能を比較する分には、
ここまでを知って頂くだけで充分かもしれません。

以下、実際の計算方法などの説明ですが、更にディープな世界へ。

システムゲインの計算方法

いきなり結論から書きます、規格書に下記のグラフが出てきますが、
この傾きがシステムゲインになります。(て、ホントいきなりやな)

f:id:mengineer:20160405231614p:plain

X軸:カメラのデジタル出力レベル
Y軸:デジタル出力レベルの分散値

X軸が0〜4000なので、これは12bit出力(のカメラ)の取得データだと
推測出来ます。(実際には暗時レベルを引いたりしますが詳細は後述)

Y軸の計算方法も後述しますが大雑把に言うと、カメラの露光時間を
飽和するまで段階的に増やしながら、順次データを取得していきます。

右上がりのグラフが、右端の”saturation”と書かれた箇所で落ちていますが、
ここでカメラが飽和したことを示します、特徴的なかたちですね、
このグラフをEMVA1288データとして開示しているメーカーも有ります。

グラフの傾きなので、システムゲインKは下記の計算式になります。

 { 
K =\frac{\sigma^{2}_{y} - \sigma^{2}_{y.dark}}{\mu_{y} - \mu_{y.dark}} 
}

実際には、グラフのカメラが飽和しない範囲での傾きを近似計算します。
(規格書では、saturationレベルの0~70%部分を使うよう推奨)

名称 説明 単位
K システムゲイン DN/e-
{\sigma^{2}_{y}} 明時のデジタル出力分散値 DN2
{\sigma^{2}_{y.dark}} 暗時のデジタル出力分散値 DN2
{\mu_{y}} 明時のデジタル出力値 DN
{\mu_{y.dark}} 暗時のデジタル出力値 DN

明時:センサー入光状態、 暗時:遮光状態 です。

ここで疑問がひとつ、システムゲインは電子数とデジタル出力の相関だったのに
肝心の電子数ってどこ行ったんだ? と思いませんか?

その答えは、規格書を色々調べて判ったのですが(またまた自分なりに)
結構なボリュームになるため、詳しい説明は割愛します。

ここでは、上式(グラフの傾き)で計算出来ることを覚えておいて下さい!

{\mu_{y}}{\mu_{y.dark}}の計算方法

規格書ではMean gray valueと呼ばれ、下記の計算式で計算します。

f:id:mengineer:20160406125936p:plain

同じ露光時間で、2つの画像({y^{A}}{y^{B}})を取得します、その平均値が{\mu_{y}}です、
{\mu_{y.dark}}も同様で、遮光状態で取得した2つの画像の平均値です。

露光時間(明るさ)を変えながら、順次これらの画像を取得/計算していきます、
規格書では最低でも露光時間を50分割して測定することが 推奨されています。

更に{\mu_{y}}{\mu_{y.dark}}を計算します。(って、単に引くだけです)

{\sigma^{2}_{y}}{\sigma^{2}_{y.dark}}の計算方法

規格書ではTemporal variance of gray valueと呼ばれ、下記の計算式で計算します。

f:id:mengineer:20160406132818p:plain

画像は先ほどの{y^{A}}{y^{B}}を使用します、画素毎にAとBの差の二乗を求め、
その平均値が{\sigma^{2}_{y}}、同様に暗時画像で計算したものが{\sigma^{2}_{y.dark}}になります。

{\sigma^{2}_{y}}{\sigma^{2}_{y.dark}}を求め、先ほどの{\mu_{y}}{\mu_{y.dark}}と一緒にExcelでグラフ化、
近似直線(線形近似)で傾きを求めます → これがシステムゲイン

注意として、いわゆる黒が潜ったような状態だと{\sigma^{2}_{y.dark}}が 異常に小さくなり、
変な結果になる場合有り、また{\mu_{y.dark}}は遮光状態なので通常ほぼ一定値ですが、
これが露光時間により大きく変動するような場合も同様です。

最初のグラフみたいに、飽和する手前までほぼ直線になるのが正解ですが、
途中で変なうねりなどが出る場合は、カメラの状態も調べてみて下さい。

量子効率再び

最初の話に戻ります、システムゲインKは電子をどれだけデジタル化するか?
なので、電子数{\mu_{e}}とデジタル出力{\mu_{y}}の関係は下式の通り。

{ 
 \mu_{y} =  \mu_{y.dark}  +  K\mu_{e}
}

{\mu_{y.dark}}は、さっき出てきた暗時デジタル出力です。(入射光によらず一定)
また電子数{\mu_{e}}は、光子数{\mu_{p}}に量子効率{\eta}を掛けたものなので、
上記の式は {  \mu_{y} = \mu_{y.dark}  +  K\eta\mu_{p} } よって{\mu_{p}}が判っていれば、

{ \displaystyle
 \eta = \frac {\mu_{y}  -  \mu_{y.dark}} {K\mu_{p}}
}

から量子効率を計算出来ます、前回その1で電子数{\mu_{e}}の計算式は無いので、
デジタル出力から逆算します、と言いましたが、それがこの内容です。

ふう、やっと前回の宿題まで辿り着きましたので、今回はここまで。